『近代万博と茶 世界が驚いた日本の「喫茶外交」史』を読む

日本茶
2025.7.4

今年は万博の年

今年2025年は「大阪・関西万博」の年ですね。

4月に開幕し、10月まで半年にわたって開催される予定です。
すでに足を運ばれた方もいらっしゃるでしょうか。
万博のシンボルとして建造された「大屋根リング」や、世界各国のパビリオンが話題となっています。

茶道に関するイベントも催されたようですね。
近年日本のお茶や茶道文化は海外で注目されているので、国内外のお客様に喜ばれたのではと思います。

『近代万博と茶 世界が驚いた日本の「喫茶外交」史』

どんな本?

そんな万博の年に出版された本を一冊をご紹介します。

吉野亜湖・井戸幸一『近代万博と茶 世界が驚いた日本の「喫茶外交」史』(2025.2,淡交社)を読んでみました。

1867年の「第2回パリ万博」に始まり、1933年の「第2回シカゴ万博」に至るまで、「茶」に関する展示を行った先人たちの足跡を、膨大な資料を元に紹介した本です。

著者は、万博を「時代を映す鏡であると同時に、大規模に世界中の人々が集い、物と情報が行き交う一大イベント」とし、当時(近代)の万博が人々の思想や生活に与えた影響は、情報化社会に生きる現代人が想像する以上のものであっただろうと記しています。

そんな中で、日本は日本茶や茶道文化をどのように世界へ向けて発信したのでしょうか。
興味深く感じた点をいくつか挙げてみます。

日本パビリオン

近代の各万博において日本が出展した「パビリオン」はどのようなものだったのか。

読んでみて驚いたのは、欧米の地において、想像以上に「日本式」のパビリオンを作り上げていたことです。

日本式の建物や庭園、喫茶店を造り、和服を着た日本女性が給仕する。
茶室も造られ、茶の湯体験ができた万博もあったようです。

詳細については、ぜひ本をお読みいただければと思います。

緑茶にミルクと砂糖?

万博の日本喫茶店では、客の求めに応じて煎茶に入れるミルクや砂糖を提供する場面もあったとか。

日本人の感覚では意外に思ってしまいますが、紅茶と同じ飲み方と思えば不思議ではないのでしょうか。

また、「こんな昔からあったの?」と驚くようなドリンクや抹茶のスイーツも提供されていたことが記されています。

遠いようで近い過去

本の中で紹介された万博は19世紀後半から20世紀前半に開催され、一見遠い過去のように感じてしまいます。

しかしこの本を読んだことで、当時の日本人がお茶や茶道文化を海外に向けて発信するべく奮闘し、そしてそれらが世界に受け入れられていったことがわかりました。

その様は、日本茶や抹茶が海外で人気を博している現代と重なります。

過去は現在と確かに地続きなのだと感じさせてくれる一冊でした。

お茶や近代史に興味のある方にお勧めしたい本です。

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